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Marquis’s house:駒場公園 旧前田公爵邸

子供の頃、ここは資料館だったため写真を撮ることはできませんでしたが、今はこうして自由に写真を撮ることができます。
その上、月曜火曜の休館日のうち火曜日は貸し切りで商業写真撮影ができるとか。
案内してくれたボランティアのガイドさん曰く「ここはアニメの舞台になったらしく、コスプレさんたちが撮影とかするんですよ」と。
なんか60代か70代の方から「コスプレ」なんて言葉が聞けるとは(笑)
ということで、目黒区立駒場公園内の旧前田公爵邸です。

この邸宅の歴史
この邸宅の歴史
加賀前田家は元々、本郷にお屋敷があったそうですが東京帝大に譲り、東京帝大農学部が所在していたこの地を得て1929年(昭和4年)に洋館、翌年には和館を建てました。
当時、貴族の館は洋館と和館で1セットだったらしいのですが、当主の前田利為侯爵は留学経験もあり洋館だけのつもりが、周囲から「和館も」と言われて建てたそうです。
この看板のあるところを左に曲がると和館、そのまま右に進むと洋館に通じる分かれ道にあります。

大きく円形を描く道なりに進むと見えてくるのがチューダー様式の洋館の車寄せ。中を見学すると分かりますが、この車寄せ上のテラスは長女美意子さんの部屋でした。この方、ハクビ総合学院学長などを務めた方なんだそうです。
エントランスホールから車寄せを撮ったもの。ガラス戸越しなので、ホール内の照明が映り込んでいたのが面白かったので。
そしてこのガラス戸のノブが素敵だったものですから、『冷房中なので閉じてください』と書いてある下げ札をちょっと取らせていただいてパチリ。

いよいよ中へ。
エントランスホールに入ってすぐ右手には待合室だったらしく、現在はお茶やコーヒーが飲める喫茶室になっています。
喫茶室の正面は庭に面し、更に右手はサロンになってます。ちょうど上の写真の車寄せ右側の塔部分に当たります。
サロンに入って目についたのが暖炉。但し、火をくべるところは陶器で塞がれていて「んっ?」と思っていたら、この館は地下にボイラー室があって全館ヒーター暖房。そのため、天井や壁などにそれらしき空調口があります。
サロンの左手にはやはり庭に出るステンドグラスのドアがあり、この部屋の雰囲気はとても良いです。

エントランスホールの左手にはアルコーブを備えた緩やかな階段。通常の階段の段差より低くて踏板の幅もあり、ガイドさん曰く「足元を見なくても下りられるようにではないか」とのこと。レディのフィニッシングスクールでは階段を下りるとき下を見てはいけない、と読んだことがあります。そう云えば、エスコートがレデイの前を下りるのは、レディが階段を踏み外して落ちそうになるのを防ぐため、とも聞いたことがあります(笑)
さて、二階にはみごとな透かし彫りの目隠しがあります。
この館は終戦後、進駐軍に接収されたそうですが、この透かし彫りは外されなかったそうです。

階段の正面が広間です。二間続きで引き戸で区切ることができるようになっています。
この部屋だけ各窓にはシャッターが設置されていて、一カ所だけ壊れたシャッターを見ることができます。
さて、この部屋の奥、左手が来客を招いての食堂。ベイウィンドウに使われている大理石には日本橋三越で見られるようなアンモナイトの化石を見ることができます。
この食堂の暖炉周辺には和紙製の壁紙は浮き彫りに金を貼ったもので、左脇に一部が残っているのですが部屋が暗くて写せませんでした。
食堂の奥が配膳室、食事は地階のキッチンからエレベータで運ばれたそうです。
そして、この配膳室から隣の和館へと続く渡り廊下が見えます。
洋館側から見ると洋式に、和館から見ると和式に見えるように作られていて、二階からだとその様子が良く分かります。

一階は来客など公的なフロアとして使われ、二階は家族の生活の場となっています。
階段を上がって右手突き当たりが長女の部屋。ここも二間続きを一つの部屋として使っていたようです。
その手前は庭側に短い廊下──なぜか床の間のようなくぼみを持つ──を通って、侯爵の執務室。読書家だったらしく長女の部屋に面した壁一面がガラス戸のはまった書棚。
そして、洋館であるにも関わらずここの暖炉の飾りは珠を持つ龍。
廊下を挟んだやや狭い──といっても、それなりの広さはありまして──次女の部屋。元は図書室だったそうです。
その隣が家族が食事をしたり、くつろいだりする奥方の部屋。ここの暖炉の飾りは奥様の名前「菊子」さんからとられた「菊」
一番奥が主寝室。当時の猫足家具がみごとです。
バスルームを挟んで次男or三男の方の部屋があり、その奥が従業員の建物になります。
一気に庶民的and和室がいくつも続きます(笑)
当時はここと敷地の周辺に従業員住居があり、通ってきたそうです。その人数150人ほど。
そうそう、ここを建てたのは今の竹中工務店だそうです。

そして、庭側からの光景はこんな感じ。洋館らしく左右にはガーゴイルが配置されていました。
庭ですが、改めて見ると意外に狭かったですね。
私が遊びに行った頃はこんなに桜はなかったし──区はここを桜の名所にすべく植えたそうです、遊技場もなかったし、ただただ広々とした芝生が素敵だったんですが……

洋館から和館に入るといきなり天井が低く感じます。
一階のメインは二間、その間の欄間が見事なんですがどうしてもブレて写せなくて……。
庭の左手奥に小さな滝があり、そこから右手にまるまると太った鯉が泳ぐ川が流れてます。
昔、当時のガイドさんから、進駐軍は床の間の銘木や壁にペンキを塗りたくり、返還後、元の色つやに戻すのが大変だったと聞いた覚えがあります。う〜ん、まあ、破壊されるよりはマシだったのかな。

旧古河庭園や旧岩崎邸のように予約もいらず写真も撮れる旧前田公爵邸は、洋館を満喫するのに最適ですよ。

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